機能性表示食品を作る

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臨床試験を実施する際の注意点

機能性表示食品の届出に際して、臨床試験を実施することで、新たな機能性にチャレンジできるメリットもありますが、費用も期間も相応にかかります。さらに、せっかく臨床試験を実施したのに機能性表示食品のエビデンスとして使えない、と言ったことも十分あり得るため、適切な試験計画が求められます。では、臨床試験を実施する際に、どのような点に注意すればいいのか。そのポイントについて解説します。

渡邊 憲和
このページを私が書きました

渡邊 憲和:2006 年に東京薬科大学薬学部を卒業後、CRO 企業で、医薬品・医療機器の開発、サプリメントの開発・企画販売を行う。次に製薬大手企業であるグラクソ・スミスクライン(株) で市販後調査の業務に従事。2013 年7月に(株) 薬事法マーケティング事務所を立ち上げ、代表取締役に就任した。
2015 年4月にスタートした機能性表示食品におけるアドバイザーとして、多数の大企業および中小・ベンチャー企業、地方自治体などへのコンサルティングを行っており、携わった機能性表示食品の届出製品数は300 を超えている。

研究レビューと臨床試験のどちらを選ぶか

現在、食品の臨床試験を実施する目的としては、機能性表示食品を取得するため、というケースが非常に多くなっています。

機能性表示食品において機能性エビデンスを示す方法としては、研究レビューで既存論文のデータをまとめるか、新たに臨床試験を実施するか、という2択になります。

臨床試験を実施する際の注意点

研究レビューというのは、既に公表された論文データを使用しますので、汎用性はあるものの、論文・エビデンスの量には限りがあります。

研究レビューで表現できる内容は、既存の論文データに依存することになります。望むような論文が存在しなければ、研究レビューにより機能性表示食品を届出することはできません。

したがって、“新たな領域での機能性を目指したい”といった場合や、“新たな関与成分で機能性表示食品を取得したい”といった場合には、ヒト臨床試験を実施する必要があります。

機能性表示食品で認められる表示とは

ここで、機能性表示食品で認められる表示について考えてみたいと思います。

機能性表示食品で表示できる内容としては、「機能性表示食品の届出等に関するガイドライン」において疾病に罹患していない者の健康の維持及び増進に役立つ旨又は適する旨と定められています。

ここでいう「健康の維持及び増進に役立つ」とは、以下の3つのいずれかを指します。

  • ① 容易に測定可能な体調の指標の維持に適する又は改善に役立つ旨
  • ② 身体の生理機能、組織機能の良好な維持に適する又は改善に役立つ旨
  • ③ 身体の状態を本人が自覚でき、一時的な体調の変化(継続的、慢性的でないもの)の改善に役立つ旨

機能性表示食品で新たな機能性をうたいたい、といった際には、ガイドラインにある3つの「健康の維持及び増進に役立つ旨」に合致するかどうかを考慮する必要があります。

新たな機能性表示を目指す際の注意点

さて、ここで問題となるのは、新たな臨床試験を計画する際に、ガイドラインの条文だけでは、どのような機能性がうたえるかがイマイチ掴みにくいことです。

この点を解決する方法としては大きく分けて2つあり、まず一つ目が受理された機能性表示食品の表示内容を参考にすることです。

機能性表示食品は既に3,000近い製品が受理されており、さらに、1000製品を超える特定保健用食品(トクホ)の表示内容についても参考になります。

これらの表示内容を踏まえて新たな機能性を考える、ということが一つの解決策となります。

そして、二つめの解決策が、“機能性表示食品の届出をしたけれど、行政より指摘が来てしまった事例”を参考にする、という対応です。

機能性表示制度では、受理された製品の情報は公表されますが、その裏では、事業者が苦労して届出したものの指摘を受け、差し戻しされた数多くの届出情報が存在しています。そして、その情報は公表されないため、どのような機能性をうたうことで指摘がくるのか、といった情報は届出した関係者以外は知ることが出来ません。

本協会のメンバーは、機能性表示食品の制度が始まって以来、数多くの製品の届出サポートを行っており、機能性表示食品として届出したが、残念ながら差し戻しを受けてしまった、という情報を多数蓄積しています。

“どのような表示内容に対して” “どのような指摘がくるのか”、そして“どのように修正することで受理されるのか”といった知識を持っているということは、機能性表示食品の臨床試験を計画する上で、非常に貴重な情報源となります。

せっかく届出したけれど受理されなかった、という情報を新たな製品に活かすことで、「高い費用をかけて臨床試験を実施し、論文化も出来たのに、届出したら指摘を受けてしまった!」という最悪のケースを極力避けることが出来ます。

本協会では、臨床試験の実施だけでなく、研究レビューの作成や届出業務の支援といった機能性表示食品に関する開発スキームを全て網羅しているため、最新の行政動向を踏まえた臨床試験の計画を設計することが可能です。

“食品成分が本来持つ有効性”を“制度に合った表現”かつ“消費者が理解しやすい表示内容”としてアウトプットできることが臨床試験を実施する上での理想形であり、本協会では、そのような理想にできる限り沿えるよう、臨床試験の設計・実施することを心がけております。

日本食品エビデンス協会