機能性表示食品を知る

KNOW

機能性の評価方法

機能性の科学的根拠を説明する方法

届出食品における機能性(効果あるいは有効性)の科学的根拠を説明するためには、下記の方法のいずれかを用いる。

臨床試験

臨床試験

届出食品を対象に、ヒトでの臨床試験を行い、機能性を証明する方法。
トクホ申請に準拠した試験方法に則って試験を実施し、試験結果を論文にまとめ、査読付き論文として公表された論文を届出資料に添付する必要がある。臨床試験が可能な施設や責任医師、健康成人からなる被験者の確保が必要であり、莫大な手間と費用がかかるが、どんな機能性関与成分にも活用できる。

研究レビュー(システマティックレビュー(SR))

研究レビュー(システマティックレビュー(SR))

現存する全ての研究報告から、届出食品あるいは機能性関与成分に関連する情報を調査し、機能性を評価する方法。
原則2名以上の専門家で、国内および海外の文献データベースを用いて文献検索を行い、採用した文献のバイアスを考慮して評価を行う。

機能性関与成分や臨床試験について幅広い知識が必要であるものの、臨床試験に比べれば圧倒的に安価で開発可能。ただし、科学的根拠を評価するに足る研究報告が存在しない機能性関与成分について、実施することができない。

臨床試験と研究レビューの比較

比較項目 臨床試験 機能性関与成分のSR
必要とされる科学的根拠 届出食品を対象とした臨床試験のアクセプト済み査読付き論文 対象となる機能性関与成分に関して現存する全ての研究報告の考察
想定されるコスト
  • 臨床試験の実施施設費
  • 評価項目の測定機器費
  • 被験者への協力費
  • 倫理委員会の開催費用
  • 責任医師への謝礼金
  • 試験協力スタッフ人件費
  • 試験資材の制作費
  • 試験食品及び対象食品
  • 試験データの統計解析
  • 論文制作費

上記等を含め、計約1000万円~

  • 文献DB使用料
  • 文献取り寄せ費用
  • SR制作費
  • 専門家への謝礼金

上記等を含め、計約250万円~

表示できるヘルスクレーム 直接的な表現が可能
「本品にはBの機能があります。」
間接的な表現しかできない
「本品にはA(成分)が含まれます。AにはBの機能が報告されています。」
広告可能なデータ 発表した文献のデータ全て 関連する研究報告全てを総合的に評価する研究レビューの本質を損なわない範囲で提示できるデータ
複数商品の展開 届出商品を対象とした試験を根拠としているため、他商品への利用は難しい 機能性関与成分の根拠を証明しているため、同じ機能性関与成分を配合する他商品への展開も可能
知的財産権 条件が合致すれば、用途特許の取得が可能 特許取得は難しい

「臨床試験 vs SR」選択の判断材料

臨床試験VSシステマティックレビュー

いざ機能性表示食品を作りたいと考えた場合、臨床試験と研究レビューでは果たしてどちらで開発を行うべきでしょうか。上記の比較表を元に、それぞれの開発方法に合う機能性表示食品の条件を検討してみます。

コスト面

まず、最も経営判断に関わるコストですが、これについては議論するまでもなく、圧倒的に研究レビューで実施する方がコストは安く済みます。どこまで科学的根拠の信頼性を担保したいかにもよりますが、極端なことを言えば、もし自社で研究レビューを実施した場合、社員の人件費以外の費用は数万円で済みます(研究レビュー以外の届出資料作成費は含まない)。しかし、社内で実施した研究レビューの信頼性は、消費者にとってどう映るか?という上市後の展開も考えると、社外の専門家あるいは医師による客観的な評価が欲しいところです。

メリット

では得られるメリットについてはどちらが大きいでしょう?

研究レビューにより届け出た商品のパッケージや広告には、間接的なヘルスクレームしか使用できない他、機能性を証明するデータについても大きく制限されます。機能性関与成分のSRはあくまで機能性関与成分の機能性を評価したに過ぎず、届出商品そのもののデータではないためです。一般社団法人健康食品産業協議会による「『機能性表示食品』適正広告自主基準」では、「研究レビューの対象となった論文のうち、代表的な1報を事例として提示しています」等の選択理由を併記すれば、SRに採用した文献からデータを広告に使用してよいとされています。ただし、SRの本質を見失うような都合の良いデータを選び取った場合には誇大表示にあたる可能性も示唆されているため、データの使用には細心の注意が必要です。

一方、臨床試験による届出を行った商品では、直接的なヘルスクレームを使用でき、臨床データもそのまま広告等に活用できます。また未知の機能性関与成分の効果を発見した場合には用途特許を取得して、知的財産を守ることも可能です。そう考えると、臨床試験の方が上市後の販売戦略は立てやすいと言えます。トクホマークはありませんが、トクホ商品と同様の販売手法を活用できそうです。

機能性関与成分について研究レビューを行うことは、機能性関与成分の機能性を証明することになるため、1つの商品だけでなく、その機能性関与成分を含む他の食品にも活用できるわけです。味や形状の異なる複数の商品群を検討していた場合、可能性によっては再度研究レビューを作り直す必要がないというのは、食品メーカー様にとってはとても大きなメリットになるでしょう。研究レビューが不可能な新規成分についても、臨床試験後、その論文を用いてSRを行い、シリーズ展開していく開発戦略であれば、臨床試験の開発費も回収できるのではないでしょうか。

ただし、研究レビュー自体には著作権が発生するため、社外の専門家に委託する場合には契約内容に注意しましょう。

結論

機能性関与成分の性質と上市後の販売計画を考慮した上で、状況に合わせて臨床試験と研究レビューを組み合わせるのが望ましい。

臨床試験および研究レビューの被験者対象

原則、「疾病に罹患していない者(未成年者、妊産婦、授乳婦 を除く)」を被験者対象に設定します。ただし、表示しようとする機能性と関連しないことが医学的に明らかな疾病の患者データは使用可能です。

「疾病に罹患していない者」の判断に用いる指標

  • 一般的に広く用いられている診断基準
  • 医師による医学的判断
  • 「特定保健用食品申請に係る申請書作成上の留意事項」における試験方法の範囲
    (この範囲内に限り、軽症者等が含まれたデータについても、例外的に使用が認められる。ただし、研究レビューに使用する場合は、疾病に罹患していない者を対象としたデータのみの考察も併せて行う。)

UMIN登録

国内で実施する臨床試験は、臨床試験を実施する前に試験計画をUMIN臨床試験登録システムに登録しなければなりません。
UMIN登録は、UMIN-CTRのWebサイトから登録することが可能です。知的財産の流出防止の面から、詳細な研究計画は試験終了予定日から1年以内に登録すればよいと考慮されています。

一般向け抄録の書き方

届出食品の機能性について、科学的根拠をもって説明することは、機能性表示食品を届け出た企業様の義務です。
機能性の根拠を一般消費者に理解できるように、なるべく専門用語を用いず1,000文字以内で簡単に説明します。記載内容は、臨床試験であれば実施した臨床試験の結果に関することのみ、SRであれば採用文献の結果に関することのみで説明すること。ただし、作用機序に関しては他の研究報告から考察してもいいものとされています。

具体的な記載内容も次のように定められております。

臨床試験

  • 標題
  • 目的
  • 背景
  • 方法
  • 主な結果
  • 科学的根拠の質

研究レビュー

  • 標題
  • 目的
  • 背景
  • レビュー対象とした研究の特性
  • 主な結果
  • 科学的根拠の質

上記のように臨床試験と研究レビューでは一部異なります。
安全性の根拠に比べ、記載内容が多くなるため、1000字の文字制限を意識してまとめる必要があります。

なお、一般消費者にわかりやすく書くことに注視して、別紙様式(Ⅴ)3~16に記載した内容の範囲を超えないように気を付けましょう。

臨床試験・SRを検討する

日本食品エビデンス協会