機能性表示食品を作る

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臨床試験の実施

機能性表示食品制度では、研究レビューによる届出の他、従来のトクホで必須とされるヒト試験(臨床試験)による届出も可能になっています。
しかしながら、研究レビューの届出資料を整えることに比べ、臨床試験を実施するためには時間とお金が桁違いに必要になります。
このため現在(2020年2月)、臨床試験による届出は全体の約7%に留まり、殆どが研究レビューによる届出となっています。

では、なぜわざわざ時間もお金もかかる臨床試験による届出を選択する必要があるのでしょうか?
ここでは臨床試験を実施することを選ぶ理由について解説します。

日本食品エビデンス協会代表理事 深谷泰亮
このページを私が書きました

日本食品エビデンス協会代表理事 深谷泰亮:生物工学修士を経て、医薬品・医療機器の開発業務に従事。2011 年に医療専門のホームページ制作会社を創業し、医院の集患を支援してきた。2015 年機能性表示食品の開発支援事業に参入し、「酔わないウメッシュ」などの機能性表示食品をトータルプロデュースしてきた。平成28 年度大阪トップランナー育成事業の認定を受け、医師と食品メーカーの橋渡しで「美味しくて健康」なドクターズフードを開発している。
著書:「新医療広告ガイドラインで日本の医療が変わる」メディカルビジョン出版

臨床試験による機能性表示食品の届出メリットとは?

臨床試験を実施する理由としては、次のような場合が考えられます。

  • ①機能性関与成分に関する文献が存在しない。
  • ②機能性関与成分に関する文献は存在するが、機能性表示食品制度で求められる条件を満たす文献がない。
    (群間比較による有意差が出ていない、査読付きの雑誌に投稿されていない等)
  • ③機能性関与成分に関する文献が存在し、求められる条件も満たしているが、販売に適していない。
    (有効性についてのエビデンスが弱い、関与成分の用量が多く採算が合わない等)
  • ④既存の競合商品との差別化を図るため、販促のため

①や②の場合については、研究レビューによる届出が不可能であるため、臨床試験の実施が必須となります。想定通り臨床試験が成功し、機能性表示食品として届出が受理されれば、これまでにないヘルスクレームを表示でき差別化が可能になります。実際①と②に対する臨床試験の件数は増えてきています。また、機能性表示食品制度では複数の機能性関与成分を組み合わせて届け出ることが認められていますが、組み合わせることによる安全性については確かめられていないことも多いです。そういった複合関与成分の届出を行うための安全性試験も今後は増えてくることが見込まれています。

一方、③のように臨床試験をあえて実施しなくても、研究レビューによる届出で販売することは可能であるが、今のままだと経済的メリットが少ないといった理由から、臨床試験を検討する場合もあります。こういった場合には、臨床試験の妥当性・自社の経営体力、商品ポートフォリオ・市場予測などの判断材料を集め、慎重に実施可否を決定する必要があります。費用面から先送りにしてしまいがちですが、逆に競合他社に実施されたとしても今の市場を守れるかといったリスクを念頭に置き、今のうちに医学専門家や第三者機関と共に検証しておくことが肝要です。

最後に④の場合ですが、現時点ではこういった理由で臨床試験を実施するケースは少ないと言えます。しかしながら、「効果が期待できる成分が入っている」のと、「この商品自体で効果を証明している」では、消費者に与える信頼性が大きく異なります。実際の臨床試験のデータを指し示すことによる販促パターン拡大のメリットは計り知れません。今後①や②の臨床試験が増えるとともに、臨床試験による優位性が浮き彫りになってくることでしょう。

臨床試験を実施したい。 でもそんなお金はない。

恐らく多くの方が「臨床試験は高い」というイメージを持たれていることでしょう。
確かに臨床試験を実施するためには、臨床試験に必要な計画書や同意文書などの資材作成、倫理審査委員会の開催、被験者募集の費用、被験者の負担軽減費、臨床試験を実施する研究機関の人件費や検査代など、多くの設備や人件費がかかるため、研究レビューによる届出に比べるとどうしてもお金が必要になります。

では、その費用が受託機関によって大きく異なるということはご存知でしょうか?
こういった情報はいざ臨床試験をやると決めて、各社に見積もりを取ってみないとわからないため、意外に知られていません。臨床試験費用の相場はないに等しく、中には同条件で1000 万円以上の開きがあったという事例もあります。

臨床試験は高い?

なぜそういったことが起こるのでしょう?
それは臨床試験を実施できる機関がまだ少なく、医薬品申請に必要なレベルの病院で実施することで、機能性表示食品の臨床試験としては過剰な試験体制を構築するケースがあるためです。前述した通り、臨床試験には多くの業務行程があり、場合によっては様々な検査を行う必要があります。医薬品の場合、その一つ一つを専門家に依頼し、分業してダブルチェックすることで信頼性を高める必要がありますが、食品ではそこまでのクオリティを求める必要がありません。例えば、短期的な食事の影響力が少ない成分に対して、数日間入院して被験者の生活習慣を厳密に揃えようとするケースがあります。自ずと莫大な実施費用がかかりますが、得られた結果にとってこういった条件が費用であったかを吟味する必要があります。

なぜそういったことが起こるのでしょう?

一見、病院規模が大きいことや関わる人数が多い程、試験の成功率が高まるといったイメージを抱きがちですが、実際はむしろ逆です。規模が大きい程、病院の都合に合わせて実施する必要があり、関わる人数が多ければ多い程プロトコールの理解が偏り、逸脱するリスクが高まります。最も効率性が高く、成功率が高まる体制は、対象とする試験に合致した時間的余裕のあるクリニックで、プロトコールを熟知した経験豊富な最少人数のスタッフで実施することです。こういった点を考慮に入れて、少なくとも3 つ以上の受託機関で相見積もりを行った上で、依頼先を選定することをお勧めします。

依頼先を選定することが大事

臨床試験の実施を迷われている会社様へ

機能性表示食品の届出による第一選択は研究レビューによる届出で間違いありません。しかし、届出受理件数が2500 件を越え、メジャーな機能性関与成分による研究レビューの届出が一巡した今となっては、既存の研究レビュー付き原料を購入して自社食品に添加しただけの機能性表示食品では差別化が付きにくくなっていることも確かです。

最終目的を届出受理ではなく、届出事業者様の繁栄と消費者の健康増進と捉えている当協会にとって、臨床試験実施によるメリットは計り知れないと考えています。「効くと言われている」だけの成分のエビデンスを証明し、査読付き論文として世界にその効能を広く伝えることは、素晴らしい社会貢献であるとともに後世に渡って永続的に企業イメージを向上させる手段となります。

当協会は臨床試験を実施したいと願う全ての事業者様を支援します。いつでもご相談ください。

日本食品エビデンス協会